先月私の日本語学習の生徒さん(アメリカ在住、高校生、K君)の祖父、写真家の吉野信さんがご逝去されました。
生徒さん、ご家族の皆様に心よりご冥福をお祈り申し上げます。
私はK君が小学生の時に出会い、彼とは今年で6年のお付き合いになります。
K君は小さい頃から吉野さんのことが大好きで、日本語授業で使うスカイプ名も吉野さんのニックネームを使っています。
祖父の吉野さんにあこがれ世界の情勢や歴史に関心が強く、広い視野で物事を捉えており、まだ高校生ですが時折社会人と話しているような錯覚さえ感じることがあります。
彼は毎年夏休みには家族でアメリカ横断旅行に行き、移動先のホテルで日本語授業を受けてくれますので私にとっては訪れたことのないアメリカを一緒に旅しているような幸せなレッスン時間です。
今年の夏は吉野さんも旅行に同行され、私もパソコンの画面越しに挨拶をさせて頂き、初めてお会いすることができました。
吉野さんの穏やかな優しい口調に大変恐縮すると共にK君の心優しい人となりが吉野さん譲りであることが画面を通して伝わってきました。
アメリカ旅行を終えK君はお元気だった吉野さんと残りの夏休みを利用して日本に遊びに来ました。
ですが、日本滞在中にご病気の再発により突然のお別れとなりました。
ご家族の皆様はもちろん、私も急なことに気持ちが追いつかず悲しみに暮れる中、K君ご家族と初めて実際にお会いしました。
ご家族に吉野さんの写真集と盾をいただき、作品の1枚1枚を眺めるたびに生前の吉野さんの自然と動物に対する温かく熱い思いに涙がこみ上げて止まりませんでした。
私は写真好きな母の影響で動物写真家の故星野道夫さんが好きなのですが、星野さんの作品と思いが重なるところがあり、吉野さんのご家族に伺ったところお二人は一緒にアラスカのキャンプで過ごしたことがあるそうです。
物言わぬ自然や動物たちの生命の一瞬を記録し、私たち人間に答えのない世界を美しさと厳しさで問いかける作品として数多く残してくだったことに尊敬と感謝の思いでいっぱいです。
言葉ではなく感じるのです。
耳をすませてみれば全ての世界の声が聞こえてきます。
いつまでも生き続ける写真の数々、手にとった方々は深く自己探求ができることでしょう。
そしてどの瞬間の映像も自分の中の幸せを投影していると気がつくのではないでしょうか。
私は吉野さんの作品に多くの励ましと幸せを頂きました。
過酷な撮影環境の中で湧き上がる生命の喜びに満ちた思いで撮られた写真だったと思います。
レンズを通して吉野さんの目に映った一瞬の作品に私も触れられること、こんな幸せなことはありません。
一生の宝物になりました。
吉野さんの美しい世界が皆様に届きますように…
ありがとうございます。
吉野さんのオフィシャルサイトです。
数多くの素晴らしい作品がございますので皆様もお手にとって頂けたら幸いです。